あた〜らしい春が来た♪
 

「新婚さんバトン?」


     8




濡れたタオルや着替えることで出た洗い物たちを洗濯機に放り込み、
家へと上がれば、イエスが早速にもこたつへ入っているのが見えて。
ああ馴染んだ風景だなと、
やっと帰ってきた相棒の姿がある景色へ胸の内をほわんと温かくしつつ、

 「ほらイエス、まだ少し髪が湿ってるよ?」

風邪をひかないなんて聞かないからね、ちゃんと乾かしてよと
ドライヤーを手渡しながらお尻を叩いておいて、自分はキッチンへ。
下ごしらえは済ましていたのか、
オーブンのスイッチをいれ、コンロの鍋へと点火して。
蒸し器の湯気を見つつ、てきぱきと立ち働けば、
イエスの長めの髪が毛先まで乾くころには支度も完了。

 「さあ、ちょっと早いけど夕食にしよっか。」

春キャベツのキッシュにトウモロコシと玉ねぎの天ぷら、
茶碗蒸しにタケノコの土佐煮が並ぶ食卓はなかなかに賑やかで。

 「あ、私これ大好きvv」

ちょっぴり胡椒も利いてる炒めキャベツを、
あまい旨味ごと封じ込めたキッシュは、
軽く焼き上がってるタルト生地がまた 程よい香ばしさで相性も良く。
甘いといえばトウモロコシの天ぷらも、
プチプチという食感と甘さが格別で。
途中から醤油を掛ければ風味も変わって二度おいしくて。

I あなたの作った夕食を食べた旦那様が「おいしい!」と言ってくれました。


 「今日のお弁当もね、みんなから褒められたんだよ?」

美味しかったなぁと無邪気に口にするイエスの言へ、
実は聞いてましたとも言えず、

 「そ、そうなんだ。嬉しいなぁ。」

やや白々しくも微笑ってお返事したブッダだったりしたのであった。





バイト先でのハプニングやおしゃべりの内容などなど、
表情も豊かにそれは楽しく語るイエスで。
まるで学校であったことをお母さんへ報告する子供のよう。
そんなイエスの様子へ、こちらも屈託なく笑い転げたり
ワクワクと続きを待ってみたりしつつ、

 “勿論、一緒に見聞きして
  ねえと顔を見合わせ頷き合った方が
  嬉しいには違いないのだろうけれど……。//////”

いつも一緒だからこそ、
お留守番してて詰まんなかった?
私、こんなことを見聞きしたよ?と共有したくて話してくれるのかと思うと
そこがまた嬉しいと思う辺り、
慈愛の釈迦牟尼様であるから、ならでは…というよりも
愛しいイエスの話だからというエッセンスの方が大なのかも。(う〜ん)
それに、

 「ウチの方では何かあった?」

そこまでの自分のお話と打って変わって
ちょっぴり伺うように訊くのは、
寂しくなかった?という意味合いも含まれているからか。
自分だけ人に囲まれて、いろんな楽しいことと遭遇したの
不公平だなぁと思ってなぁい?という
恐る恐るな気持ちが何とも可愛いなぁと苦笑して、

 「そうだねぇ。」

お髭の端っこ、天ぷらのかけらがくっついてたのを
コタツのお向かいから そおと手を伸べて摘まみ取ってあげつつ、
何かあったかなぁと視線を巡らせて見せ、

 「そうそう、前にテレビで観た、
  カレンダーの金具のところを折り曲げたので、
  レトルトや詰め替えがきれいに絞り出せるってあったじゃない。
  あれをやってみたら本当にびっくりするほど絞れたよ?」

12枚つづりのカレンダーをまとめていた部分。
金属なので不燃ゴミだなぁと思いつつ、
でもそういう“小技”みたいなのをテレビで観たもんだから、
いつかやってみたいなぁって思ってて。
丁度シャンプーを詰め替えることとなったんで、よぉしと試してみたらば、

 「え?え?どんなだった?」
 「えっとぉ…。」

言うより見せた方が早いかなと、
ひょいっと立ち上がり、
これもブッダの主夫の知恵で ビールの箱を半分にした専用ごみ箱まで足を運ぶと、
セットしてあったプラ包装のごみだけを仕分けしている袋の中から
くるんと丸まった薄い薄いパッケージを摘まみだす。
真空状態に近いほど一滴のこらずというほど絞り出せたからこその丸まりようで、
そうだというのが一見して伝わったからこそだろう、

 「わあ、凄いっ。」

そこまで丸くなるものかとこっちも驚いたくらい、
どちらかといや切れ長なはずの双眸をまん丸く見開いて、
喜色満面、大喜びするイエスであり。

 「凄いなぁ、私もやってみたかったなぁ。
  いつもちょっと残ってるみたいなのが気になって、
  キミってば う〜んなんて唸っちゃうものね。」

そっちの凄いへ驚いてから、

 「ウチに居てもそんな凄いをやってみちゃうなんて、
  ブッダも凄いよねぇ。」

私だったらうっかり忘れちゃってるに違いない。
そやって、面白いことや凄いことを取りこぼす
日常あるあるの見逃しなんていう勿体ないこと、
一体幾つやらかしているものか、なんて。
そこまで感嘆してくれるのだから、

 「…それは言いすぎだよぉ。////////」

さすがは“よかった探し”の天才だと、今更ながらに思い出し、
何だかこそばゆくなっちゃって。
ごみはごみ箱へと戻すと
そそくさと元いたところへ戻って来て、
もうもうと含羞みを誤魔化すように箸を取り、
そのくせ頬の熱いのはなかなか引かぬまま、
食事の続きに手をつけるブッダだったりしたのであった。



      ◇◇


明日もイエスのアルバイトは続くわけで、
しかも2,3日は早出のモード。
よって、夜更かしは厳禁だよと、
食事の後片付けを終えたブッダは、そのままコタツを片づけてしまう勢いだったりし。

 「いやいや、それは大仰でしょう。」

最近は夜更かしとも無縁の身だとはいえ、
それでもそこだけは無邪気な子供じゃあない、
8時だ9時だなんて早すぎる時間では眠くならないよぉと、
押入れを開けて布団を下ろそうとしかかるのへ、
待った待ったと手振り付きで止めにかかったイエスだったが、

 「いいじゃない。どうせ引いちゃうものなんだし。
  それに今日は何だか冷え込みも久々に強いようだから、
  布団の中に入ってた方が温かいよ?」

コタツだと電気代を食うが、
布団なら体温で温まるのだからそこも経済的だと言いたいか。
でもでも、あくまでも神々しいまでの朗らかに、
ちいとも世知辛くはない言いようをされてしまっては、

 「そ、そうだね。」

詰め替えへの見事な技とどう違うのかと突っ込まれたら困るのか、
いやいや、まさかにそこまでは考えちゃあいなかったれど。
コタツがあった痕跡を示すよに、新聞だのみかんかごだのが置き去りになってたの、
窓辺や壁際へテキパキ動かす働きっぷりで
賛同っぷりを示してのそれから。
まだまだ消灯というわけでなし、
枕側になったテレビを並んで眺めたり、
バラエティ番組の中、ちょっとびっくりな何かが映り込んじゃった映像へ、
皆さんが指摘した影よりも、

 「あれ?」
 「うん。クロゼットの前にいたよね。」

スタジオにお揃いのタレントさんたちからは勿論のこと、
取材したのだろう製作スタッフからさえ全然指摘されてはない個所に、
彼らには堂々と映って見えてた何かしら。
もうもうお茶目なんだから、
成仏もしないでいるだけでも困りものなのに、
こんなして取材されてどうするの、と。
いやそっちは誰も気づいてないと思うのですがな対象へ、
しょうがないなぁという溜息ついてしまってたり。(怖い怖い)
眠くなるまでのひと時を、
和やかに過ごしていたお二人だったのだけれども。

K 寝る時間になりました。「おやすみなさい」旦那様が布団に入ります。

ぽんぽんと、此処においでと布団を叩いてもらって、
そこへ微妙に照れつつも いそいそと潜り込む…のが新妻でしょうかvv
そんなの今更、布団の中へと落ち着いてから、

 『ぶ〜っだvv』

遊びましょとでも誘うかのよに軽やかな声を掛けるイエスのは、
なかなか照れが引かないブッダへ、
えいと思い切るのがしやすいよう、
抱っこさせてとこっちから誘った格好にするためで。
いつもの就寝時間が近づき、
子供じゃあるまいしと言いかかった割に、
その“いつものお時間”が 実は10時過ぎ見当なのは、
訊く人が聞いたらおやおやと笑われちゃうかもしれない、
そんな生活態度への清廉っぷり。
これも布団にくるまってた効果か、
何となくもう眠くなりかかってたイエスの耳へ、
わさわしという布団のカバーを鳴らすような音が聞こえて、

 “ああそうだ、明かりを消さなきゃだ。”

それへと身を起こしたブッダらしいと、
気配で察したヨシュア様。
何ごとへも良く気がついて、
骨惜しみせずパパッとその身を動かす彼なのへ、
天界では打って変わって周囲から甘やかされてた延長か、
ついつい 手掛ける人がいるならばと任せる側に回りがちなの発揮して、
微睡かかりの柔らかな感覚に身をゆだねかかっていたのだけれど。

 ぽそん、と

明かりが消されたそのまんま、
すぐの間近に立ってた気配が とすんと力なく姿勢を低めて来たのへ、
やや遅れて気がついたイエスの上、
ふわんといい匂いが乗っかってきた。

 「…ぶっだ?」

そういや昨夜は可愛いお顔で照れてたなぁ。
明日はアルバイトに行くんでしょなんて言い出して。
それを理由にするならこっちが持ち出すはずでしょうにと、
くつくつ笑ってぎゅうと抱きしめたら、
目の前のうなじが見る見る真っ赤になったのが印象的でと思い出しつつ。

 「なぁに? キミ、今日は乗っかりたいの?」

眠かったせいで口が回らず、
何だか妙な訊きようをしたようで。
明かりを落としたばかりの空間、
向かい合う相手のお顔はなかなか透かし見えにくかったが、
こちらを組み敷いた割に、
手もその身も重さを掛けぬよう上手に避けていたにもかかわらず、

 「…っ。」

こちらへ伝わったのが、ひくりというすくみの気配。
大方、そんな露骨に言わなくてもとか、そう思ったブッダらしさがあっさり届いて。
くっついて寝たいだけかも、
それか、もしかして…眠くなった私なのなら
あのその、あれこれ触って高め合うの、
たまには自分からしてやろうかなとか思った彼なのかも。

 「もしかして、私の手際が歯がゆくなった?」
 「え?」
 「もっと高まる触れ方とか、手ほどきしてあげようって思った?」
 「な…。///////」

ああ、間近から見下ろしてるお顔が真っ赤になったらしくて、
一応は間合いの距離があるのにここまで熱いのが伝わってきたぞと。
大胆なんだか、やっぱり純情なんだか、
そんな態度が文字通り手に取るようにわかるブッダだったのへ、

 「隙ありvv」
 「あ…。////////」

とんとつつかれたのが肘の裏。
そのままバランス崩して落ちてきた、柔らかい如来様を懐へと受け止めて、
ちょっとだけ大胆になってみようとしかかったらしいのに、
イエスの寝ぼけた云いようであっさり挫かれちゃってた初々しさごと、

 「もうちょっとだけ、私が甘える側から始めさせてよ。」
 「〜〜〜。///////」

耳元での囁きでとろかされての征服されちゃった、
結局は昨夜と同じの釈迦牟尼様。
はさりとほどけた深色の髪の中、白い腕がするりと伸ばされて、
柔らかな唇に甘い口づけ降らされるまで、あと5秒…。



   〜Fine〜  16.02.29.〜04.12

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 *ちょっと暇になったのか、
  いやいやまだまだ予断は許しません
  次は初夏向けのがやって来る間合い、
  ということで、キリの良いところで いったん終了です。
  新婚さんの日常を書いてみようと
  特に考えもしないで挑戦したらば、
  一カ月以上もかかろうとは不覚。
  長々とお付き合いいただきありがとうございましたvv

  ……で。
  もしかして…おまけの微R指定が
  いつかしらこそりとUPされるかも?(笑)

ご感想はこちらへvv めーるふぉーむvv

拍手レスもこちらvv

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